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寺尾ブッタ(月見ル君想フ)インタビュー(後編)【”アジア”で繋がるインディー・ミュージック 連載002】

April 12, 2019

【”アジア”で繋がるインディー・ミュージック 連載002】

寺尾ブッタ(月見ル君想フ)インタビュー(前編)(後編)

  

 

バンコク視点から、アジアを舞台にインディー・ミュージック・シーンで活躍する人々にインタビューをする企画。第二弾は、日本とアジアの音楽シーンを繋ぐキーパーソン、寺尾ブッタさん。前編では、タイの音楽が日本や台湾でどのように受け入れられているか、というお話を中心に伺いました。後編の本記事では、寺尾さんが見たアジアの国の間での交流の現状や展望についてを軸に訊ねました。

 

  

寺尾ブッタ(月見ル君想フ)インタビュー(前編)はこちら。

 

 

 

 

 

今後の展望とタイ〜日本間の課題


───それにしても、寺尾さんは近年、常にアジアの都市を飛び回っていますよね。
 
寺尾: そうですね。目標としては、落ち着いたら別のスタッフか誰かに任せたいですが、まだ今はライブのマーケットを開拓したい気持ちが強いので、自ら動いています。日本と台湾はバンドの交流もファンの交流も結構温まってきてると思いますが、台湾とタイ、日本とタイとかは、まだそんなにお互いマーケットが育っていないと思っているので。

 

寺尾: 例えば仮にタイだとして…… 日本のバンドを色々ブッキングすることがきっかけになって、日本とタイの間が、日本と台湾のバンド同士の交流が広がって行ったような感じになればいいなぁと。まずは誰かがやらないと始まらないじゃないですか。それで、じわじわと広がって行って、もうちょっとライブとかツアーがやりやすくなったらいいなって思っていますね。バンドを連れてきて、バコーンと人が入って。それで、自分がわざわざ行かなくてもバンドのツアーが上手く回るようなルートが確立できれば良いなと思います。

 

───最終的にはブッキングして、送り出すだけでいい感じになればってことですね。
 
寺尾: そうそう。それがビジネスになれば、うちにもいいし、バンドにとっても希望があると思うんですよ。でも現状はバンドにもよりますが、放っておいても上手く行くって感じでもなく。まだ全てがビジネスになる感じでもないので、今は頑張って投資というか。それがいつか、例えば何回かバンドが来ることでお客さんが増えていって、いつかはちょっと上がりがでるようになればいいんじゃないかなと思っています。

 

本インタビューを行った2018年12月、Paellas(パエリアズ) のバンコク公演のライブ後の様子。会場となったPlay Yardは惜しまれる中、2019年2月末に閉店。

 

───タイでやってみて、日本の基準から見て普通じゃないことや、難しいことはありしますか?
 
寺尾: そういうのはないです。でも、まだ始まったばかりな感じもして、ビジネスにするにはまだ少し難しさはありますね。今は自分の動ける範囲は常に広げたいと思っていて、アジア中をかき混ぜてコネクトして、最終的にはどこの国のバンドがどこの国に行っても、お客さんが入って、インディーズのシーンが廻っていくのがベストかなと思っています。それが、いつかは自分の身にもなる、ということを信じて。
 
───しばらくは投資を……
 
寺尾: 実際、現状一番日本のバンドにとって良いマーケットというのはやはり中国なのかもしれませんね。とにかく街が沢山ありますし、最近自分も中国に行く機会が多くなってます。
 
───以前、寺尾さんがTwitterに投稿されていた、「来年(2019年)はもっとすごい!」というのは?
 
寺尾: 自分に向けてプレッシャーをかけただけかもしれません。前々からの目標ですが、自分がやっていることを徐々に組織立てていって、もっと色んなことを同時進行で進めていきたいですね。そろそろ具体的に動き出しますよ、という意思表示でもあります。

 

広がる台北での活躍の場


───2018年末に台北のライブハウス「the Wall」のCEOに就任されたのは、どのような経緯で?
 
寺尾: これまでにも「the Wall」では何回もイベントをやったりと、元々近い距離だったのですが、経営陣の移動など色々あって、「the wall」が人を求めていたというか、請われて手伝うことになりました。中に入って、経営の手伝いをしています。まあ、非常に複雑な事情なんですけど。ただ、自分は元々ライブハウス育ちですし、ライブハウスの運営のノウハウも経験上ある程度知っているので、盛り上げられる自信はあります。頑張りたいです。あと、「台北月見ル君想フ」はバンド編成のライブには向いてないという事もあって、「the wall」は仕事の上でも非常に重要な拠点ですね。
 

台北の「the wall」。キャパ550人ほどの会場で、日本や海外アーティストも公演を行う。


───2019年2月のSunset RollercoasterとYogee New Waves(ヨギーニューウェーブス)の東アジアツアーのチケットも台北公演は一晩で売り切れて……

 

寺尾: しかも「the wall」じゃないっていう。
 
───もっと大きい所でしたっけ?

 

寺尾: 1200人規模のところです。(※11)Sunset Rollercoasterは台湾で凄い人気なのですが、Yogee New Wavesも人気ありますよ。この組み合わせによってYogee New Wavesがアジアでの認知度をさらに上げたと思いますし、これをきっかけにアジアでもっと活躍して欲しいですね。ワンマンじゃなくて一緒にやる意味は、そこにあると思いますね。Sunset Rollercoasterなんか、 すごいじゃないですか。今、アジア中で人気が爆発しかかってます。僕も散々手伝ってきましたけど、自分でももうなかなかブッキングできないですもん。バンドを動かしにくくなっちゃった。

 

※11 台北の会場は「Legacy Taipei」。2019年2月に開催されたこのツアーでは、台北・ソウル・香港の3都市で計2500人を動員し、大盛況に終えた。

 

Sunset Rollercoaster - 「My Jinji」- Full EP「Jinji Kikko」(2016)収録

Sunset RollercoasterとYogee New Waveのスプリットツアーのフライヤー。
 
───まあ、バンドにとって良い事ですよね。
 
寺尾: 非常に(値段が)お高くなっております。

 

2017年に開催されたSunset Rollercoaster、2度目の日本ツアー。at NOON CAFE(大阪)。次回の来日公演は、なんとFUJI ROCK FESTIVAL '19!

 

タイにはない、台湾政府の助成金システム

 

───あと、台湾と言えば、アートや音楽など、文化に対する政府からの助成金。タイにはそのような制度がありませんが、台湾を訪れたタイ人アーティストたちがその話を耳にし、バンコクでも話題に上がることが増えてきました。台湾の音楽に対する支援は、具体的にどんな感じでしょうか?
 
寺尾: バンドのレコーディングやツアーなどに対し、補助(助成金)が受けられる可能性があります。年に何十組か選ばれるのですが、審査があって、審査員がいて……ま、全体でみると結構なお金が出てるんですよ。でも、それが良いか悪いかは、賛否両論というか、色々あるんですよね。
 
───それはアーティストたちの間でも?

 

寺尾: そういうのを一切タッチしないと表明をしているアーティストもいますし、使えるところは使っていこうよという人も多いし。
 
───やっぱり内容はセンサー(検閲)されますよね?
 
寺尾: そうですね。内容はセンサーされます。あと逆に言うと、補助がなかったら自力ではレコーディングできないって感じになっちゃってるところもありますね。一部のバンドは「補助があったらリリースします」みたいな感じですごく他力本願になっちゃってるように思います。あと、プロジェクト単位での助成も毎年あります。これは例えば、「ワールドツアーをします」とか「海外の大きなフェスに出ます」といったプロジェクトも、選考に通れば助成の対象になります。
 
───それは、いかにも台湾の民族音楽的なものではない場合でも?

 

寺尾: ポピュラーミュージックでも、十分に有りえますね。まあ全ては良し悪しありという事で。
 
───日本にも助成金はありますが、申請などにかなり時間がかかりますよね。
 
寺尾: 台湾でも凄く時間がかかります。その書類を仕上げるのは、凄まじい労力です。でも、特にインディーズで活動しているバンドにとってはチャンスなので、みんな書類を頑張って書いたり、書ける人を雇ったりして書類を作ったりしていますね。日本もまあ、割とそういう感じでしょうね。補助を受けれるチャンスは広がってきてるとは思います。

 

 

東南アジアでの韓国ブームと、日本の課題?

 

───ここのところ、バンコクの若い世代の間で、韓国のインディー音楽の存在感が増しています。また、お隣のマレーシアでも似た状況だと耳にしますが。
 
寺尾: 台湾でも人気ありますよ。Hyukoh(ヒョゴ)とかAdoy(アドイ)とかはもちろん、色んな良いバンドが沢山いますし。あと最近は「韓国」文化自体にブランド力を感じますね。10代20代への影響力はかなりあるんじゃないかと思います。
 
───実際、同じオーガナイザーのSeen Scene Spaceが手がけているライブでも、韓国バンドの公演の場合、キャパやチケットのお値段が日本のバンドの2〜3倍かそれ以上です。Adoyはすぐに売り切れていました。
 
寺尾: それは単純に韓国のバンドがクオリティーが高いというか、人気があるってことだと思いますよ。日本のバンドは、まだまだ国際的に発展する大きな余地があるように思います。
 
───日本国内の需要が十分にあるから?
 
寺尾: というのもあるでしょうし……普通はまずは国内のマーケットに意識を向けざるを得ないでしょうね。まあでも海外でも成功したいって、日本のバンドもみんな思っていると思うんですけど。でも、韓国ほど世界に向けてバンドの良さを作り込めてない感じはなんとなくですがありますね。
 
───これからですね。
 
寺尾: だから自分の希望としては、日本のバンドがどこにも負けないくらいのインパクトを海外に向けて出してくれたらいいなと。それって、ライブに限らず音源とか作品とかの話でもありますが。バンコクも含めたアジアで、日本のインディーバンドで誰が売れているかっていうと、結構限られますよね。The fin.(ザフィン)とかdyglとか、ほんと数えるほどで。
 
───確かにThe fin. はタイでも洋楽ポジションのような、ちょっと別格な存在ですね。

 

 

The fin. - 「Night Time」at JJ Green (2015)

 

2015年に開催されたSeen Scene Space主催のイベント「POW! FEST #1」がthe Fin.の初タイ公演。翌年の単独公演では、当初の想定以上の人気のため途中で会場を変更。追加チケットも瞬く間にソールドアウトとなり話題となった。

 


寺尾: 日本での知名度が海外ではそのまま当てはまらないのも面白いですね。もちろん国によってマーケットが違うということなんですけど、それは最大の問題かもしれないですね。日本のバンドにとって。現地のプロモーターが悪いのかっていうと、そういうことではなく、好みとか言語とかの問題だと思うのですが、そこを思わぬところで越えていくのが音楽の面白いところでして、まだまだ期待したいですね。シャムキャッツにもガンガン売れて欲しいですね。アジア中で。簡単じゃないことですけどね。

 

───あと、日本でも問題点も。日本に遊びに行ったタイ人の音楽ファンは、とにかくライブのチケットを買うのが難しいって口を揃えて言うんですよ。それは言語だけの問題ではなく。チケット販売会社によっては、日本のSIMカードの電話番号がないとネットで前売りが買えなかったりすることがあり、海外住みの日本人にとっても前売りチケットの購入は難しい場合があります。その辺りはいかがでしょうか?

 

寺尾: 「月見ル」でも、独自の発券システムを作ろうかと検討したことがあります。最近は電子チケットのサービスが少しずつ色んなライブハウスで使われるようになってきていて、うちはpeatixというのをよく使わせてもらっているのですが、中国人とか台湾人のお客さんもなんとか購入いただけてるようです。現地のクレジットカードで決済し、ライブハウスでQRコードをスキャンして、入場できる、というものです。これは電話番号は必要なく、英語の案内もあるので利用しやすいですね。

 

台北・青山店共に物販も充実。写真は「青山月見ル君想フ」


タイの野外フェス「 Wonderfruit 」の魅力は?
 
───話は変わりますが、寺尾さんは以前からタイの Wonderfruit Festival(※12)に参加されていますが、どんなところに魅力を感じていますか?これまで色んなフェスに出店したり、バンドを連れて行ったりと、アジア中のフェスを見て周った中で、他に似たフェスはありましたか?

 

※12 アジアで一番ヒップなフェスティバルとも言われる、毎年12月にパタヤで開催される野外フェス。アジア各地から思いっきりドレスアップしたフェス好きが集結。

 

 
寺尾: 自分が行ったことがあるフェスの中では、Wonderfruitはデザインとかラグジュアリー度とかがとにかく魅力的です。「気持ちがいい」、「ストレスがない」ってところに、すごく気が配られて、ちゃんとデザインされているなって気がします。そもそも、別にフェスならなんでも好きというわけではないです。

 

───そうなんですか!?

 

寺尾: 結構辛い環境じゃないですか。大自然の中のフェスで雨降ったりとか。辛いもの食べてお腹痛くなったらどうしようとか。そういうのも醍醐味だったりすると思うんですけど。
 
───サバイバルな……
 
寺尾:面もありますよね。でも、Wonderfruitにはほとんどないです。快適な非日常を突き詰めたら、ああいう世界になるのかなぁって。ため息すらでます。わざわざ行く価値はあると思っています。


───偵察がてらに?
 
寺尾: ですね。いつかあのフェスにバンドをブッキングしたいなと思いつつも、行けるだけでいいかなという気もしています。仕事をしたくない。あそこは。

 

 Gym and Swimも出演。

 


台湾のオススメは?

 
───タイから台湾に遊びに行く人のために、台湾でオススメのフェスなどを教えてください。
 
寺尾: ローカルなバンドをしっかり観られる大型のロックフェスは、高雄のMegaport Festival(大港開唱)。あと、 2018年にGym and Swimが出演したWake Up Festival(覺醒音樂祭)も長年続いているローカルのフェスで、2019年頭には台北でもスピンオフのイベントを開催しました。 あとは、テーマのあるフェスもいくつか出てきてますね。最近行ったのは、Kuma Tribe(黑熊部落)ってキャンプフェス。キャンプメインですが、なかなかチルな感じで良かったです。
 
───面白そう。友達とグループで行って、楽しむ感じでしょうか?

 

寺尾: そうですね。キャンプしてゆったりする、みたいな。ただ、もしかして音楽のジャンルはロックフェスっぽい感じではなく、気持ちいい感じのがメインで、あくまでキャンプが主体ですね。


───最近、タイ人もよく台湾に行ってますよね。
 
寺尾: 観光とかですよね。ぜひ、「the Wall」にも来て頂きたいですね。日本のライブハウス文化の影響もそこはかとなく受けつつ、台湾ならではのインディーズシーンを育む「場所」として長年やってますから、音楽好きにはぜひ遊びに来ていただきたいですね。週末の夜はラウンジDJバー営業を遅くまでやってますのでそちらもぜひ。


───ライブハウスはタイにも一応あるのですが、できては潰れるというか。1年2年持つかなっていう。
 
寺尾: 「the Wal」も難しいんですけど、やっぱり続いてるってことで。自分もそれを存続させないといけない立場なのですが、そういう場所があるってことは、バンドのカルチャーを盛り上がるためには必須だと思うので。

───寺尾さんは(the Wall敷地内のクラブ)「Korner」の方にも関わっていますか?
 
寺尾: 「Korner」は先ほど言ったDJバー営業「THE BAR」として週末営業してます。以前のようなアンダーグラウンドテクノやハウスのイベントは無くなって、もうちょっとカジュアルに飲める場所として再出発してます。

 

「台北月見ル君想フ」名物の南インドカレーの他にもハーブやスパイスがたっぷりの料理を提供。ご飯やお茶にも気軽に利用できる場所となっています。

 

───あと、「台北月見ル君想フ」もですね。


寺尾: こちらは、ぜひ名物のカレーを食べに来て頂いて。小さくまとまりながらも存続していってるような、アットホームな個人店のような、すごい台湾らしさが詰まった場所です。物販コーナーもあって、ローカルのインディーズのものに色々と触れられますよ。あと、たまにイベントも開催しています!


ありがとうございました!またお話を聞かせてください!

 

 

【”アジア”で繋がるインディー・ミュージック 連載002】
寺尾ブッタ(月見ル君想フ)インタビュー(前編)

 

 

Photo: Yoko Sakamoto

 

 

 

 

 

 

 
 

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