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タイから世界へ。モーラム音楽の伝道師 Paradise Bangkok Molam International Band 。Maft Sai & Pumpインタビュー

September 1, 2018

Molam into the world

モーラム特集1

 

ロンドンで磨き上げられたDJセンスと独自の審美眼で「世界から見たモーラム」のオリジナリティを発見し、タイのローカルミュージックを世界的に評価される音楽へと更新したMaft Sai(マフト サイ)。彼が中心となって誕生した「Paradise Bangkok Molam International Band(パラダイス・バンコク・モーラム・インターナショナル・バンド)」が目指す、21世紀の新しいモーラムとは。3度目のヨーロッパライブツアーから帰ってきたMaft SaiとPump(パンプ)に話を聞いた。

 

写真左:Pump 右:Maft Sai



Maft Sai : オーストラリアで育ち、多感な時期をロンドンで過ごしたタイ人DJ。2007年にタイに戻り、相棒のクリスメニストとレジデントDJをつとめるパーティー「Paradise Bangkok」をスタート。革新的ななモーラム再発掘活動で世界的な評価を得ている。スクムビット51にZudrangm HQ Record Store、Studio Lam (クラブ ・バー・音楽レーベル) を運営。


Pump : バンド「Apartment Khunpa(アパートメント・クンパ)」のギタリスト。Paradise Bangkok Molam International Band(以下、Paradise Bangkok Bandに略)ではベースを担当。


─ モーラムにはいつ頃から触れていたのですか?


Maft Sai : 子供の頃から長い間タイに住んでなかったので、帰国の度にラジオやテレビから流れいた音楽って感じだね。当時耳にしてたものは、80~90年代のドラムマシーンで作られているモーラムだった。DJを始めてからオリジナルの音(60~70年代初頭にバンド録音されたもの)をレコードで発見したときは、その個性と実験的な音作りに本当驚いたね。僕がイギリスでプレイしていたジャマイカやエチオピアの音楽との共通要素があって、それらの音楽と並列にならべてもまったく遜色のないものだった。


Pump : 僕はタイで育ってるから、人々が聴いているのを街で耳にはしていた。タクシーとか、労働者とか、周りのワーカーが聴いてるから。どのタイ人にとってもモーラムは馴染みのあるもの。イサーンの人はタイのどこにでもいるからね。


─── DJパーティーからライブバンド結成へ発展したいきさつを聞かせてください。


Maft Sai : 僕が主催するDJパーティー「Paradise Bangkok」に、60~70年代当時のモーラムバンドに出演してもらうために、当時のミュージシャンを探し始めたのがきっかけ。実際にイサーン(タイの東北地方)に行ってオリジナルメンバーを探すのは本当に大変で、出演してもらうまでにかなりの時間がかかった。その頃から「自分たちでオリジナルのモーラムバンドを始めるべきだ」って話をPumpとしていたんだ。昔のサウンドのトレースではない、もっと現代的なサウンドで演奏するバンドをね。その後、自然とメンバーが集まっていって今の形に落ち着いたんだ。


最初の2年間のツアーは、アルバムリリースなしで回っていた。バンドのアルバム「21st century molam」は、2014年の終わりまで出来上がらなかった。そのアルバムに収録されているモーラムは「新しいモーラム」で、新しい楽器を使ってている。

 

Disc 1

 “21st century molam”
Paradise Bangkok Molam International Band
Format : Vinyl / CD


アルバムは良い評価を得ているよ。例えばGilles Peterson(ジャイルス・ピーターソン)* がアルバムをピックアップしてくれたり、2015年の年間アルバムにノミネートされたり。それからは様々な世界規模のビッグフェスティバルに出演して、ジャイルス主催のフェステバル( Worldwide festival )にも出演したよ。とても良い経験だった。凄くいい環境で、全て良い感じだった。2015年はヨーロッパツアーを2回、トータルで40公演くらい。

 

*BBCラジオの人気DJ/音楽ジャーナリスト


僕らがチャレンジしているようなこと(伝統的な音楽を進化させること)は70年代に既に始まっていた。ベトナム戦争時にウドンターニーに米軍基地があった影響で、それまではイサーンになかった西洋楽器が入ってきた。当時のモーラムミュージシャン達は、まるでインディーバンドのようにその新しい楽器を使って実験を始めたんだ。そこにはどうやってドラムを叩くとかベースを弾くとかのルールはなかった。彼らは自分たちのの伝統的なメロディーラインやリズムを独自にミックス・再解釈して進化を始めたんだ。こういう「実験精神」が僕たちにとってもスタート地点。実験を重ねて音楽を発展させてきた先人達と同じ精神が、僕たちの根底にはあるんだ。


─── タイの若者、特にバンコクではモーラムはカッコいい音楽とは思われてなかったけど、活動し始めてどう変わりましたか?


Maft Sai : かなり変わったよ。モーラムをDJでプレイし始めた当初は「なんでタクシードライバーの音楽を流すんだ?」、「なんで田舎の音楽をかけるんだ?」とか、「ロンドン帰りなのにもっと洗練 された音楽かけないの?」なんて色々言われたけどね。だけど、「パラダイスバンコク」でモーラム・アフリカ音楽・ジャズ・ソウル・ファンクなど様々なレコードを並列でプレイすることで、「この音楽は どこから来たんだろう」ってお客さんが考えるのを止めはじめたんだ。人の固定概念を変えるのには時間がかかることだけど、2~3年でお客さんは音楽に対してオープンになったね。特にバンコクの若い世代がモーラムに対してオープンになってきたのは、大きな変化。10代や音大生、アートシーンでも音楽シーンでも、モーラムに対する評価は良くなってきてるね。


最初期のParadise Bangkokのお客さんは、8割が外国人で2割がタイ人だった。バンドをスタートしてからはタイ人が増えて、2014年末のアルバムリリースパーティーでは6割がタイ人で4割が外国人。より多くのタイ人に受け入れてもらえるようになってきている。


※Paradise Bangkok 
Maft Saiが相棒であるFinders Keepers の一員Chris Menist(クリス・メニスト)と2009年にスタートしたDJパーティー。モーラム、ルゥクトゥン、タイファンクを中心に、世界中の音楽をミックスし、多国籍なオーディエンスに支持されている。このパーティーが母体となり、Paradise Bangkok Bandが誕生した。

 
─── イサーンの若者の反応はどうですか?


Pump : イサーンの子たちはとても喜んでいるよ。自分たちのルーツの音楽が、僕達のバンドを通して世界中に広がってみんなが楽しんでいるのを誇りに思うって。ライブ動画にいっぱいコメント書き込みがあるから見てみて。


─── ここ数年の活動で、ヨーロッパのDJやミュージシャンはタイ音楽に興味を持ち始めているけど、オーディエンスの反応はどうでしたか?


Pump : もちろん、反応は良いよ。youtube でどんな感じか見れるよ。


Maft Sai : どんなセットを演奏するかによって違うけど、いつも大きな反応をもらっているよ。ショーの最後にはだいたいみんなノリノリで踊っているんだ。2013年のポーランド「OFF FESTIVAL」では、ソランジュ(シンガー/ビヨンセの妹)がキャンセルになった時間帯で僕たちがプレイしたんだけど、オーディエンスがモーラムで踊ってダイブする人さえ出てきて、もの凄いライブだったよ。バンドはDJとはまた違ったエネルギッシュな体験ができていつも感動的だね。

 

 THE PARADISE BANGKOK MOLAM INTERNATIONAL BAND
“LIVE AT OFF FESTIVAL”


─── バンドとしてタイ以外の国の音楽とのコラボレーションに興味はありますか?


Maft Sai : もちろん。僕が持っ ている南エチオピアの音楽コレクションの一部は沖縄の音楽に似てるんだ。タイの音楽の一部にもね。共通するものがあるよね。でも、僕らは「これ(ある国の音楽)とこれをミックスしよう」って決めてから作るタイプじゃないんだ。計画しすぎると、自分のイマジネーションにバリアを作る事になる。僕らにとって重要なのは一緒に作業するミュージシャンのマインドと共通したヴィジョン。もしそれが噛み合ない場合は、音楽を発展させることが難しくなって成立しない。


Pump : どうやってParadise Bangkok Bandの音楽を作るか説明させて。「ケーン」と「ピン」には、伝統的なメロディラインがあるんだ。例えば「滝」を表現するメロディラインとかね。そしてラインには「儀式」、「結婚式」、「sky rocket(ロケット祭り)」などのストーリーがついている。それぞれに名前もあるよ。


僕らが音楽を作る時は、例えば「滝」を想像しながらメンバーでラインを演奏し、「滝」はどうなりえるのか」と想像しフィーリングを探りながら音楽を作っていく。僕らの音楽作りの大部分のプロセスはストーリーを想像すること。ただ西洋のビートをモーラムに足すようなものではなくて、もっと想像力が必要で、深いものなんだ。


Maft Sai : うん。いくつかの音楽はそんな感じでできているね。そして、リミックスのいくつかは、「再解釈」する感じだと思う。モーラムのレゲエ的な解釈だったりね。Studio lamからリリースした12インチのRabih Beaini aka Morphosisリミックスは、より実験的でエレクトロニックなバージョンになっている。

 


─── Rabih Beaini aka Morphosisの実験的なRimixが収録されているのは意外でした。


Maft Sai : 彼はいつもベルリンでギグをするときはいつも見に来てくれるんだ。彼との制作はアルバムリリースする前からスタートしていた。2013年くらいかな。で、1年くらいしてから『こんなタイプの音楽ができてきた』ってメールをくれたんだ。僕らは「ここは好きだけど、ここはそうじゃない。どう思う?」って返事をした。その後、1年半ほどかけてやりとりをする度に音が変わっていって、最終的にお互いが素晴らしいと思える音楽が完成したのでリリースしたんだ。 


今は国やジャンル関係なく、色々なアーティストと関わることができたらって思ってる。現在やり取りしてるアーティストは何人かいて、floating points、fourtetとは一緒にやろうって話をしている。でも、リリース日は特に決めていない。お互いが曲のクオリティーやアレンジを素晴らしいって思えるようになった時が、リリースのタイミングだね。

 

 
───次のアルバムの予定は?


Maft Sai : 僕らは今2枚目のアルバムを作っている。モーラムと実験的なエレクトロニック・ノイズ・アンビエントなどのミクスチャーになってきている。


Pump : その実験には、メンバーそれぞれの新しいイマジネーションを今まで以上に注ぎ込んでいる。

 


───若い世代でモーラムを始めてるバンドで、なにか気になる人とかいる?


Maft Sai : モーラムの新しいバンドはあんまり知らないんだ。イサーンの街や村に行けば色んなバンドがいるんだけど、だいたい上の世代のバンド。若い人だと、ラム・シンや、よりダンスにフォーカスしたスタイルで、それはまた違う感じだね。バンコクの新しいバンドだと、Siang Hong Lionsは良いね。他に2、3人モーラムを演奏する人はいるけど、それはバンドとしてじゃない。


※Siang Hong Lions 
シーラチャとコンケーンのミュージシャンを中心として結成された新世代バンド。モーラム・ラムシン・レゲエの要素をミックスした演奏で人気を集めている。12月6日のMAZIRU music 2015で、久々にバンコクでの演奏を披露した。 


───バンドとして日本で演奏する予定はありますか?


Maft Sai : 今の時点ではまだ日本ではブッキングはされてないけど、もちろん演奏したいよ。僕がDJで行くだけなら、小さいクラブで2、3のショーだけでツアーが成立するけど、バンドで行くならメンバーも多いし、色々コストがかかるから、もっと大きなフェスティバルとかじゃなきゃいけないんだ。


今、タイ人は簡単に日本に行けるようになったけど、昔はビザが必要で、銀行の預金残高の書類とか色々、ビザを作るのに必要だったけど。今はビザもないし、LCCで航空券も安いし、イサーンの普通の人とかでも、そんなに書類を用意しないでいいので行きやすくはなったね。

 


───このインタビューでモーラムに興味を持った人へのお勧めの音源は?


Maft Sai : もちろん僕らのアルバム「21st century molam」。新しいタイプのモー ラムが聞けるよ。他にはタイ初のモーラムビッグバンド「Theppabutr Productions」のコンピレーション。60 年代末~70 年代初頭にレコーディングされたもので、いろんなタイプのモーラムが聞ける。あとは「Sound of SIam vol.1・vol.2」。これは色んな違ったタイプのタイ音楽が聞けるからおすすめ。ルーツミュージックと最新の音楽。常にどちらもチェックすることが良いと思うね。

 

 


Disc 2

 The Sound of Siam Vol.1, Vol.2  www.zudrangmarecords.com

写真左:Pump 右:Maft Sai

 

Maft Sai : オーストラリアで育ち、多感な時期をロンドンで過ごしたタイ人DJ。2007年にタイに戻り、相棒のChris MenistとレジデントDJを務めるパーティー「Paradise Bangkok」をスタート。革新的なモーラム再発掘活動で世界的な評価を得ている。スクムビット51にZudrangm HQ Record Store、Studio Lam(クラブ ・バー・音楽レーベル) を運営。


Pump : バンドApartment Khunpaのギタリスト。Paradise Bangkok Molam International Bandではベースを担当。

 

Photo: Yoko Sakamoto

 

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