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Ginn (dessin the world) インタビュー(中編)【”アジア”で繋がるインディー・ミュージック 連載003】

July 26, 2019

【”アジア”で繋がるインディー・ミュージック 連載003】
Ginn (dessin the world) インタビュー (前編)(中編)(後編)

 

バンコクで音楽レーベルを運営し、日本とタイのインディー音楽界の架け橋となるサポートを活動を続けているGinnさんにロングインタビュー。

 

3部構成の中編となる本記事では、前回の「日本でのアジア・タイの音楽の状況」の話から、「今、アジアに出るべき理由」と「アジアでの日本の音楽の現状や未来のこと」へと話が進みます。タイに住み、タイの音楽シーンの中にいるからこそ見えているものとは?

 

 

Ginn (dessin the world) インタビュー(前編)はこちら。

 

 

 

 

日本のインディーバンドがアジア・タイに出ていくのは必然

 

 

Ginn:台湾と日本の間はもうこの5年くらい行き来が盛んになり、今では毎週のように日本のバンドが(公演に)行ってますよね。でも、気軽に行けすぎちゃうようになり、台湾の人にとって日本のバンドの目新しさがなくなっている面もあると思います。それで日本のバンドが台湾の次にどこを目指すかとなると、おそらく中国。とにかく人口が多く、国土が広いので、各所を周るツアーが成り立つ。

 

 

 

 

しかし、中国参入に様々なハードルがあるのはタイだけでなく日本のバンドにとっても同様。現地のSNSや音楽配信サービスを使ってのプロモーション、ビザの手配など、現地コーディネーターの助けは必須となりますが、その手助けを得るには、日本で既にある程度の知名度があり収益が見込めるバンドでないとなかなか難しい現状も。

 

 

Ginn:そうなると、台湾の次は東南アジア。なかでもタイは人口もそれなりに多く、日本ほど整ってはないものの音楽ができる場所があり、掘っていけば意外と良いバンドもいて、ちょうど良いんですよ。実際、タイ公演を希望するバンドがここ3年くらいで増えてきました。それは、ボクたちがやっているプロジェクトが徐々に日本国内でも認知されてきており、タイでライブを行う道筋が見えるようになった事もあると思いますが。タイに来たい日本のバンドは、(FEVERの)西村さんと仲の良いバンドがよくタイに行っているのを見て、まず西村さんに相談するみたいなんです。「どうも(日本)国内では西村さんが窓口らしい」って。

 

 

Left→Right:Ginnさん(dessin the world)、西村仁志さん(FEVER)、西伸也さん(Parabolica Records)。大盛況に終えた先日の「FEVER TOURS IN BANGKOK」にて。

 

 

日本の音楽が過剰供給とも言える先の台湾の話を引き合いに出し、「タイではあまりそういった状況にはしたくない」と、Ginnさんは話します。

 

 

Ginn:ボクとしては、「なんだ日本のバンドはこんなものか」と思われたくないので、人真似のような音楽しかやってないバンドはもちろん、日本国内でちゃんと活動していないようなバンドや、観光がてらにライブをしにタイに来ようとする心意気のバンドなどもサポートはしません。逆も同じく、タイのバンドから「日本に行きたい」と相談を受けた場合も、クオリティーが低いバンドの支援は行わず、「タイにもこんな良い音楽があるんだ」と、思ってもらえるようなバンドだけをサポートします。こと音楽に関して、日本にとってタイはOne of them=いくつかある中のひとつでしかない状況なので、タイのしょぼいバンドを(日本に)送り、「たいしたことない」と思われてしまうと、それはボクにとっても、タイ音楽界にとってもマイナスにしかなりません。

 

Ginn:また、ボクはメジャーフィールドでやろうとは、あまり考えていません。日本でもタイでも、メジャーフィールドの人たちは自国の人たちに向けてやるのが効率がいいと思います。逆にインディーズの人たちの方が、最新の音楽を取り入れていたり、独自の音楽をやっていたりするので、各国に少ないながらもそれを聴く人たちがいるのだと思います。だから海外に行きやすい。

 

 

Stamp「BANGKOK SUMMER」- 「EKAMAI DREAM 1」収録(2019)

日本ではTOY'S FACTORYから新アルバムをリリース。「セルフプロデュース能力が突出したStampさんのように、日本でも活躍できる例外も。」(Ginnさん)

 

 

この1〜2年が勝負どき

 

 

Ginn:日本でもタイでも、人口が減り、逆ピラミッドになり始めているので、これからパイの奪い合いになっていきますよね。そこで、上手く参入できるという前提条件はあるものの、もし中国に行けば10億人(市場がある)とか、そういう風に攻めていく方が商売としては効率的なので、そっちにいかざるを得ない状況になっていく。そして、その「アジアに出て行かなきゃいけない」というのは、この1〜2年。ボクは、そこで勝負が決まると思っています。

 

———Ginnさんが常々発言されている「席の奪い合い」のことですね。

 

Ginn:もう既に変わりつつありますが、ここ数年内に日本でも音楽を聴く形態が本格的に変わり、CDで飯を食っていた人たちは産業構造の変化の煽りをもろに受ける。既にその兆候はでており、今は(日本の音楽業界が)「これから何で食っていこう」という時代になる過渡期。でも、その時になって「海外向けにプロモして音源聴いてもらわなきゃ。海外でライブしなきゃ。物販売らなきゃ。」となったとしても、恐らくアジアにおける「日本の音楽」というものの席はなくなっていると思う。そして、そこに座っている人たちは、多分、韓国・台湾。

 

 

前回の寺尾ブッタ氏のインタビュー(前編)でも触れたように、他のアジアの都市と同じく、バンコクのインディー・ミュージック・シーンでも特に韓国のインディー・バンドの存在感は眼を見張るものがあります。

 

 

Ginn:ここ2年程で感じているのは、日本のバンドがタイに来てもソールドアウトしない。でも、韓国のバンドがタイに来るとソールドアウトする。それぞれのバンドの本国での(当時の)人気度合いは同じくらいでも、なんでタイに来るとこんなに立ち位置が違うんだろう?って。ボクの考えでは、キーワードは「10年くらい前」。今、自由になるお金を持ち始めてる20代、つまりバイトを始めた大学生や社会人2〜3年目の人たちは、10年前の韓国ブームの煽りをダイレクトに受けた世代なんですよ。10代の多感な時期に、韓国のアイドル・映画・ドラマのブームの波をもろに受けたその世代の人達から見ると「韓国はクール」で、「日本はクールじゃない」。

 

 

20〜30年後のアジア。その時、日本の立ち位置は?

 

 

Ginn:今40〜50代のタイ人たちは、幼少期に仮面ライダーやドラえもんが好きだったり、車はトヨタやホンダ、電化製品もシャープ、三菱、パナソニックなどを使ってきた人たちなので、(こちらが)日本人というだけで勝手に下駄を履かせてくれる人たち。ボクが営業の仕事をしていた頃に、(営業先の)決定権者である今40〜50代のタイ人たちに話に行くと、ボクが何をしたわけでもないのに日本人というだけで勝手に良くしてくれるんです。でも、今20〜30代のタイ人たちにとっては「日本人だから」というのはなんでもない事なので、20〜30年後にその子たちが40〜50代の決定権者になった時に、日本人が彼ら彼女らとビジネスをするとしても、「日本人だから」といって下駄を履かしてはくれないと思います。

 

———「韓国はクール」というのがいつまで続くのかはともかく……。既にデパートのスマホ売り場に日本ブランドは一つもありませんし(※1)、タイの若い世代が憧れる対象となる日本のものは圧倒的に不足していますよね。

※1  Xperiaは2018年にタイから撤退

 

Ginn:今のタイの10〜20代が過ごしているのが「韓国ブームの時期」ってことですよね。10年前はまだ韓国はアイドルとかそういう(マスの)レベルだったけれど、今では韓国からバンドが外に出始めている。また、台湾は政府の文化部がアーティストの海外進出を支援している。さて、日本はどうするのか、と。

 

 

アジアの都市間が繋がり始めている中、日本はチャンスを逃している?

 

 

タイからアジアツアーに出るバンドが増えると同時に、台湾・韓国などからの来タイ公演も増え、着々とタイ〜アジア各国間のパイプが出来始めている。一方の日本は、タイに進出する好機を自ら逃しているような残念な話を耳にすることが度々あり、本インタビュー中にも複数出てきました。その中から、タイの音楽フェスにおける「日本枠が減った」現場をGinnさんが目撃したエピソードを紹介します。

 

Big Mountain Music Festivalのメインステージ

 

 

Ginn:ボクが2017年にINSPIRATIVEのサポートドラムとして海外ツアーを周った時、台湾ではLUCfest(※2)に出たのですが、そこにタイからはBig Mountain(Music Festival)(※3)のTEDさん、Cat Radio、Fungjai、つまりメディアパートナーとフェスパートナーが参加していたのに対し、日本からはレーベルとライブハウスの人しかボクは見なかった。日本のフェスとメディア関係者がいないことに愕然としました。それはこのフェスの主催者から呼ばれなかったのか、呼ばれたけど行かなかったのかは詳しく聞いていないので分からないのですが……いずれにせよ、残念な状況ですよね。去年はフジロックのSmashの人が行っていましたが。

 

※2  2017年11月に台南で始まった音楽ショーケース。台湾のWhite Wabbitレーベルなどが主催。Ginnさんが出演したのは初回。

 

※3  Big Mountain Music Festival(BMMF)。タイ最大手GMM所属アーティストからインディーバンドまで出演する、2010年に始まったタイ最大規模の野外音楽フェスティバル。

 

 

Ginn:それで、その年のBig Mountainには韓国と台湾のバンドが複数出演していて、以前は2〜3組は出ていた日本のバンドは1組しか出てなかった。台湾のバンドの出演に関しては、そのLUCfestがきっかけだったようです。あと、2018年のCat Expoに初めて台湾のバンドが出ていたことも。

 

Phum Viphurit - 「Lover Boy (Music Bar Session)」(2019)

タイでは人気のインディーレーベルRats Recordsに所属するPhum Viphurit 。日本ではInpartmaintからリリース。「ちなみに、この初回のLUCfestはタイから出演したPhum Viphuritが日本のレーベルと出会い、日本リリースとなりました」(Ginnさん)

 

 

Ginn:そして、そういうアジアの動きを見たタイの人たちが「タイでもやらないと」と、さっそく今年11月に始めるのが「Bangkok Music City - BMC 2019」。SXSWのようなショーケースイベントで、FungjaiとNaylonが主催します。「日本の音楽関係者を呼んでくれ」というオファーも来ており、ボクも一部お手伝いすることになっています。

 

———そのショーケースは、タイと欧米でなく、タイとアジアを繋ごうという趣旨のものですよね?

 

Ginn:アジアだと思う。ボクも最終的にアジア圏での繋がりを作りたいと思っています。(寺尾)ブッタさんに関しては、例えば台湾〜日本とか、中国〜日本・台湾とかが強いですよね。ボクがいきなり全部のアジアをやり始めたらどれも中途半端になるので、ボクはタイに住んでいる日本人として、まずタイと日本の繋がりを強くするのが目先の目標です。いつか然るべきタイミングで、そういう人同士が繋がっていくと思っています。それぞれに強いパイプを持っている人たち同士が繋がれば、点や線でなく面になり、やれることが広がっていく。そして 「アジアで繋がる」という目標があるので、韓国・台湾やその他のアジアの国とも仲良くできれば。でもボクとしては、ちゃんと日本の席も1個か2個ぐらいは取っておかないといけないので、「日本、もうちょっと頑張ろうよ。他の国頑張ってるから、全部取られちゃうよ!」と……。

 

Left→Right:寺尾ブッタさん(月見ル君想フ)、Piyasu (Poom)さん(Seen Scene Space)、Ginnさん(dessin the world)

 

 

———その「日本のために席を確保する」という、一連の活動の原動力となっているものは?

 

Ginn:月並みな答えですが「音楽への恩返し」です。多分、音楽をやってなかったら、こんなに人生楽しくなかった。こんなに知り合いも増えなかったし、自分が生きていて楽しいな、幸せだなと感じる瞬間って、音楽があったからだと思うんです。それは日本で活動してたときの、あの地下のライブハウスだったり、毎週通ってたタバコ臭いスタジオだったり、一緒に切磋琢磨した日本の音楽仲間たちだったり。その時期のあの繋がりが、今そうさせているのだと思います。

 

 

自らレーベルを始めた理由

 

 

今も昔も「タイから日本」より「日本からタイ」へと文化を輸出する量が圧倒的に多いなか、2009年にGinnさんがバンコクで始めた自主レーベル「dessin the world」は「双方向」の関係を作ろうとする試みとなっています。

 

 

Ginn:コミュニケーションは一方通行だと絶対にどこかで行き詰まるので「双方向じゃなきゃいけない」と、始めたのが(レーベル)「dessin the world」です。日本の良い音楽をタイの人に聴いてほしい。タイの良い音楽を日本の人にも聴いてほしい。それが出発点です。ボクたちのプランがどんどん重なっていくイメージの名前をつけた(コンピレーションアルバム)「a plan named overlap」(※4)を2010年に始め、以降、日本とタイのその時に良いバンドを集めたジャンルも国籍も関係ないコンピをリリースしています。

 

※4 タイと日本のインディーバンドの曲を紹介するコンピレーションシリーズ「a plan named overlap」をリリース。第1弾(2010年)はCDで、以降はDL配信で、現在第5弾(2016年)まで発表。

 

Safeplanet - 「โอยา (OHEYA)」(2015)

シリーズ最新作「a plan named overlap #5」(2016)に収録。ファーストアルバム「Safeboyz」の日本盤はSPACE SHOWER MUSICより10月2日にリリース。朝霧JAM'19出演も発表されました。

 

 

Ginn:実は、第6弾をやろうかと考えているのですが、出すとしても次が最後だなと。もう今はDLの時代でもなく、(サブスクの)playlistで作れちゃうじゃないですか。でも、まだサブスクに曲をあげてないけれど良いバンドや、サブスクにはあるけどあまり注目されていないバンドがタイにも日本にもいるので、やるなら、そこをさらって終わりにしようかなと考えています。そして、その次は違う名前・違う形で発信をしていくと思います。タイのインディーズ界に入り込んでいる日本人として、今この瞬間にタイのアンダーグラウンドで起こっていることを紹介していきたいです。知りたい人がいるかどうかはわかりませんが(笑)。

 

 

後編に続きます。(近日公開予定)

 

【”アジア”で繋がるインディー・ミュージック 連載003】
Ginn (dessin the world) インタビュー (前編)

Ginn (dessin the world) インタビュー (後編)


 
Photo: Yoko Sakamoto

 

 

 

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